フェアリーリング(菌輪)とは?キノコが生み出す幻想的な自然現象の正体

フェアリーリング 被写体を知ろう
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フェアリーリング(菌輪)とは?

菌輪
菌輪は、キノコが円状に地面に生えて作られる輪っかで、英語では「妖精の輪」という意味の”fairy ring”、”fairy circle”、”elf circle”、”pixie ring” などと呼ばれています。
菌輪の大きさは数十cmや数mほどのサイズを見つけることが多いですが、大きいと10mを超えて生育環境が整っている場合は安定して成長し続けます。
フランスでは菌輪の直径が600m、総重量は100t、年齢は700年にも達した個体も報告されています。また、イギリスでも年齢数百年になるキノコが菌輪をつくったと報告されています。

妖精がキノコの周りを踊る様子

フェアリーリングと呼ばれているように各国の民話や神話にも多く登場し、要請が輪になって踊った跡と語られたり、カエルが座って毒をまくと言い伝えられたり、魔女の足跡や集会の痕跡、ドラゴンブレスの跡など様々な内容で伝えられています。

中には妖精の世界の入り口で、別の場所や過去、未来に行き来できる扉と言われることもあります。

菌輪が発生する場所

Photograph by Hélène Rival

森の中でよく見られますが、草原や牧草地などでも発生が確認されています。
菌輪はキノコ(菌類の子実体)が地面から生えて輪っかを形成するため、非常にわかりやすいですが、中にはキノコの存在が見えずに円状に草が枯れている場合や、円状に草が異常に成長しているような場合もあります。
森林や草原、牧草地などキノコが生える環境で輪っか状の痕跡があればフェアリーリングである可能性が高いです。

フェアリーリングをつくるキノコ

キノコの種類は世界で数万種が確認されていて、未知のキノコを含めると地球上には150万種を超えるキノコがあると言われています。
その中で、菌輪をつくることが知られているキノコは50種程度が知られています。そのため、キノコ全体から見るとあまり多くないと言えると思います
その中でも特にフェアリーリングをつくることが多い代表的なキノコをいくつか紹介します。

シバフタケ

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シバフタケはホウライタケ科ホウライタケ属のキノコで、北アメリカやヨーロッパを中心に日本を含めて世界各地にみられるキノコです。
夏や秋に見られることが多いですが、暖かい気候であれば年中見ることができ、名前の通り牧草地や芝生などで多く見られます。また、砂丘でも確認された例があります。
フェアリーリングをつくることで有名なため、英名ではfairy ring mushroomと呼ばれることもあります。
食べられるキノコでヨーロッパではよく食べられますが、有毒なキノコも菌輪をつくるため勘違いで中毒を起こす事例もあります。
菌輪をつくるからと言って必ずしも食べられるわけではないため注意が必要です。

オオシロカラカサタケ

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北米で最も誤食が多い毒キノコとして知られていて、もしも食べてしまうと嘔吐や下痢など胃腸に対して激しいダメージを与えます。
温帯や亜熱帯を中心に分布していますが、日本でも福島県以南で確認されていて、現在は帰化したキノコとして知られるようになりました。
晩秋から秋にかけて高えにゃ庭園、芝生や草地などに群生していることが多く、条件が揃うと菌輪を形成します。
強い有毒成分が含まれているため絶対に食べてはいけませんが、幸いなことに死亡例の報告はないとされています。

フェアリーリングのでき方

菌輪
菌輪がつくられる仕組みについてはいくつかの説が唱えられていますが、有名な説を紹介します。
普段私たちが食べるキノコは子実体と呼ばれ胞子を飛ばすためのキノコの一部です。子実体から胞子が落ちると発芽して菌糸が伸びていきます。
菌糸が広がり菌糸体となり、さらに発達していくとまた子実体を形成し胞子を飛ばすというサイクルで成長・繁殖しています。

出典:農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2110/spe1_01.html

そのため、地上に出ているキノコは一部で本体は地中にあると言っても過言ではありません。
フェアリーリングをつくるキノコは菌糸体が地中でどんどん大きくなり放射状に広がっていきます。しかし、菌糸体の中心部分は時と共に枯れてしまい生きている菌糸体が円形に残されてます。
子実体が形成されるには温度や湿度、光の当たり方などの条件が揃うことで初めて出てくるため、この条件が揃うことで初めてフェアリーリングを観察することが出来ます。

菌輪による影響

菌糸の影響で成長した植物

菌糸が地中を広がることで他の植物などに様々な影響を与えることがあります。
菌の種類によっては菌糸の表面から水を弾く疎水性の成分を分泌することがあります。この成分が他の植物の根を覆ってしまうことで植物は水から栄養を吸収することが出来なくなり枯れてしまうということが発生します。
また、菌糸が成長するときに地中の栄養を奪ってしまうため、その影響により地上の草が枯れてしまうという場合もあります。

ジベレリンの構造図

菌の中には、植物の成長を促すジベレリンを生み出す種もいるため、この菌が形成する菌糸の地上部の植物だけが異常に成長するという現象が発生することもあります。

コムラサキシメジというキノコも菌輪をつくりますが、このきのこから発見された成分から植物の成長を促すものが発見されたため有効活用するために研究が進められています。

まとめ

菌輪はフェアリーリングとも呼ばれる、キノコが円状に生えて作り出す輪っかのことです。
数十cmから特に大きいと600mほどになった例も報告されていて、大小様々な菌輪が確認されています。
その幻想的な見た目から、妖精の踊った跡、魔女の跡、ドラゴンブレスの跡など様々な民話や神話が世界各国で言い伝えられています。
キノコが広がる過程で他の植物に影響を与えて、枯れさせたり逆に成長を促すといったことが起き、キノコがなくてもフェアリーリングの存在が確認できることがあります。
日本に生えている様々なキノコでも菌輪をつくることが確認されているため、もしも見つけたら積極的に写真に収めてみましょう!

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