動物園や水族館で撮影するときに自分や他の人が窓ガラスに反射して写真に写り込んでしまうという経験をされている人も多いと思います。
今回は、そんな悩みを解決してくれるレンズアクサセリーである偏光フィルターの効果と使い方を紹介していきます。
偏光フィルターとは?
光は様々な向きに振動していて特定方向に振動している光を偏光と言います。偏光フィルターを使うことで特定の偏光を抑えることができるので、水やガラスに映った光の反射を抑えたり、色をより鮮やかに撮ることができます。
PLフィルターには通常のPLフィルターとC-PLフィルター(円偏光フィルター)の2つの種類がありますが、レンズは丸いのでレンズに取り付ける偏光フィルターはほとんどC-PLフィルターです。
あまりありませんが一眼レフカメラに通常のPLフィルターを使用すると思わぬ誤差が生じる可能性があります。
基本的には一眼レフ用のPLフィルターはC-PLフィルターになっていますがしっかり確認しましょう。今回はC-PLフィルターをPLフィルターとして紹介していきます。
偏光フィルターの効果
水面やガラスの反射を濃くしたり抑えたりすることができます。また、青空や紅葉、葉っぱなどを色鮮やかに表現できるようになります。
水面やガラスへの反射を抑制
上の写真のように通常の撮影では光が反射してしまい水中が見にくくなってしまいますが、PLフィルターを使用すると光の反射が抑えられて水中が見やすくなります。
身近なものだと偏光サングラスという光の反射を抑えるサングラスがあります。釣りをする人には特に身近に感じるかもしれませんが、同じ原理で水面の光の反射を抑えて水中を確認しやすくすることができます。
紅葉や緑葉を鮮やかに写せる
太陽光などの強い光が葉っぱや紅葉の表面で反射すると明るい部分と暗い部分の差(コントラスト)が大きくなってしまうため本来持っている鮮やかな色を写すことができなくなります。
PLフィルターを使うことで反射する光を抑えることができるので目で見るよりもさらに鮮やかな色を編集なしで写すことができます。
空を色鮮やかに表現できる
上の写真のようにPLフィルターを使用すると青空をより青々と表現することができます。
空が白っぽくなるのは空気中の水蒸気やチリなどに太陽光が反射してしまうためです。PLフィルターで光の反射を抑えることで光の反射による霞を取り除いて本来持っている鮮やかな青色を写すことができます。
春に空が白っぽくなる「春霞」は暖かくなってきて空気中の水分が増えておきる現象ですが、これもPLフィルターで多少軽減することができます。
偏光フィルターの注意点
偏光フィルターは万能ではなく場合によっては付けないほうがいい場合もあるため使う場面に気を付けましょう。
明るさが減る
偏光フィルターを使用すると明るさが1〜2段階程度下がってしまいます。シャッタースピードの1段は倍/半分になることなので、例えば1/1000での明るさが1/500や1/250で撮らないと同じ明るさになりません。
PLフィルターの効果を強めるほど暗くなるので、明るくない場所で撮影するときはシャッタースピードを確保するために三脚やレリーズを使うなど工夫が必要になるので注意しましょう。
水面の反射を楽しめない
PLフィルターを使うと水面に写る太陽のきらきらがきれいに映らなくなってしまいますので反射を楽しみたいときにはフィルターを外す必要があります。
水面のきらきらは絞りを開放してボケを表現すると非常にキレイで幻想的な写真にすることできます。
色は鮮やかだがのっぺりとする
反射を取り除きすぎてしまいますと、立体感が失われてのっぺりとした印象の写真になってしまいます。
偏光フィルターの使い方
偏光フィルターを付ければすぐに光の反射を取り除けるわけではありません。光を取り除く対象によって光源の位置を考えてカメラの位置を考える必要があります。
使い方をしっかり確認しておきましょう。
水面やガラスの反射を取り除く
反射を取り除きたい面に対して30°〜40°の角度から撮影するとPLフィルターの反射除去効果が最も現れます。
色鮮やかに撮影する
太陽に対して90°の位置を撮影することで色鮮やかにする効果が最も得られます。例えば、日の出や日の入のときは撮影者の真上付近で最も効果を得られます。
PLフィルターを使うオススメの場面
青空風景
PLフィルターを使う代表的な被写体の一つが青空です。空気中の水蒸気による反射を抑えてより色鮮やかな「青」を表現できるようになります。
紅葉
紅葉にPLフィルターを使うことで肉眼で見るよりも鮮やかな色彩を表現できるようになります。紅葉が終わりかけのシーズンでもキレイな1枚にすることができます。
緑、自然
紅葉と同じくより鮮やかに表現できるようになります。青空と組み合わせてより夏らしく撮影することもできるようになるのでオススメです。
高層ビルからの夜景
高層ビルなど窓が付いている場所からの撮影では窓に反射した自分や部屋が写ってしまうことがありますが、PLフィルターの反射除去でキレイに夜景のみを撮ることができるようになります。
このとき、窓に対して30°〜40°の角度を意識しましょう。
動物園や水族館
生き物がいる側が明るい場合には反射を気にしなくても大丈夫ですが、自分側が明るい場合は反射して見づらくなってしまいます。そういう場合はPLフィルターを使いましょう。
このとき、フラッシュは絶対に使わないようにしましょう。生き物を驚かせてしまいます。
虹
夏場の土砂降りの雨があがった後にたまに見られる虹ですが、状況によって濃く出たり薄く出たりとまちまちです。そこでPLフィルターを使うことで虹の強弱を変えて撮影することができます。
PLフィルターの選び方
PLフィルターは海外製の安いものでは2000円程度で変えるものもありますが、中には2万円程度するものもあり様々なものがあります。
安いものと高いもので何が違うのか、どのようなものを選べばいいのかを解説していきます。
フィルター径が合ったものを選ぼう
フィルターの径がレンズに合っていないと装着することができません。レンズにはΦ52mmやΦ68という記載がありますのでΦ52だったらフィルター径が52mmのものを選ぶようにしましょう。
レンズの径とフィルター径が異なる場合アダプターを付けることで装着できることもあります。ただし、焦点距離にもよりますがレンズ径に対してフィルター径が小さいとケラレと呼ばれる写真の四隅が暗くなってしまう現象が起きることがあるので注意しましょう。
焦点距離に対して厚さを考えよう
PLフィルターは2枚の窓ガラスを重ね合わせた形になっているので他のフィルターと比べてどうしても厚みが出てしまいます。
広角レンズを使うときに厚さが厚いものを選んでしまうとケラレが発生してしまうことがあるので注意しましょう。安物でなければほとんどのフィルターが薄型設計になっていますが、使いたいレンズの焦点距離とフィルターの暑さが問題ないかしっかり確認するようにしましょう。
反射率の低いものを選ぼう
フィルターの反射率は光の通しやすさを表しています。反射率が大きければ大きいほどフィルターで光を反射してしまうのでレンズに入る光の量が減ってしまい、写真が暗くなってしまいます。
反射率の低いフィルターを使うことでPLフィルターを装着してもあまり暗くならずに明るい写真を撮りやすくなります。
暗くなりにくいPLフィルターを選ぶときは反射率が1%以下と低いものを選ぶと薄暗い場所でも絞りやシャッタースピード、ISO感度を非常に有利に設定することができます。
色味を変化させにくいコーティング
安いPLフィルターは色味に影響を与えてしまうことがあります。ホワイトバランスなどの設定を同じにして安いフィルターを付けて撮ると色かぶりと言われる赤みや青みがかかった写真になってしまうことがあります。
ホワイトバランスなどの設定を変えても影響が残ってしまうこともあるので安いものを買うときは十分注意しましょう。
反射率が1%以下と低いフィルターは色かぶりの影響も非常に抑えられるためできるのでオススメです。
撥水・撥油コーティング
撥水・撥油コーディングがされていることによって汚れやほこりがついたとしてもすぐにキレイにすることができます。
汚れがついたときのメンテナンスで傷をつけないようにしても表面のコーティングに影響が出てしまう可能性があるので柔らかい布でさっと優しくなでるだけできれいにできるコーティングは非常に便利です。
オススメのPLフィルター
安いものから高いものまでさまざまなPLフィルターがありますがその中からそれぞれ欲しい人に合わせたオススメを紹介していきます。
初めての挑戦で安いものが欲しい人におすすめ
PLフィルターを使ってみたいけど1万円を超えるようなものには手を出したくないという方にオススメのコストパフォーマンスの良いフィルターを紹介します。
【マルミ光機】DHG サーキュラー P.L.D
60年以上フィルター専業メーカーとして日本の長野県から世界に製品を発信し信頼を得てきた老舗国内フィルターメーカーです。
マルミ光機のスタンダードモデルであるDHGサーキュラーP.L.DはPLフィルターの効果である反射除去と色鮮やかさを表現できるフィルターです。
専用コーティングでフレアやゴーストといったノイズを除去することができます。また、薄型設計になっているため広角レンズでもケラレが発生しにくい構造になっています。
レンズを保護するためのキャップも問題なく装着することができます。
【Kenko Tokina】C-PL(W)
カメラ関係の光学製品を長年取り扱っている実績と信頼のあるメーカーのケンコー・トキナーの最もリーズナブルで標準的なPLフィルターです。
基本的な光の反射を抑える効果と青空を鮮やかに写す効果を楽しむことができます。薄型設計にもなっているので焦点距離の短いレンズでもケラレを気にせず楽しむことができます。
初めてだからこそ機能も兼ね備えたコスパが良いものが欲しい人におすすめ
上で紹介したフィルターももちろん良いですが少し値段を上乗せするだけで機能も兼ね備えたコスパの良いフィルターになります。初めて買う方はこちらのフィルターが一番オススメです!
【Kenko Tokina】PRO1D plus WIDEBANDサーキュラーPL(W)
基本的な機能を兼ね備えたうえでガラス外周を黒塗りしているため、レンズ内反射を抑えノイズを低減することができます。薄型構造になっているため様々なレンズへの取り付けも可能です。
このフィルターの魅力は低価格に抑えられつつ最大でも反射率を1%以下に抑えられている点です。そのため、他のフィルターよりも明るく色かぶり(フィルターを付けることによる色味)を防いでくれますしシャッタースピードや絞りの設定も自由度が数段増します。
【マルミ光機】DHG スーパーサーキュラー P.L.D
DHG サーキュラー P.L.Dの良いところを継承しつつ、加えて撥水・撥油による防汚コーティングが施されています。
撥油コーティングのため、触ってしまったとしても指紋が付きにくく汚れが少しついたとしてもすぐに落とせます。川など水場での撮影を考えている方にオススメです。
画質を求めた本格的な撮影がしたい人におすすめ
多少金額が高くなったとしても性能や画質を重視したより良いPLフィルターを使いたいという方にオススメのレンズを紹介していきます。
【Kenko Tokina】ZX C-PL
ケンコー独自のフレーム構造「フローティングフレームシステム」を採用しておりガラス面に負担がかからず思わぬ誤差を生じさせない画期的な構造になっています。
このフィルターの最大の魅力は表面反射率が0.3%以下、最大偏光でも0.6%以下と非常に反射率に優れている点です。非常に明るく他のPLフィルターに比べて1段以上明るくなり、色かぶりなどの影響を最小限に抑えることができます。
さらに撥水・撥油加工されているため汚れにも非常に強く使う場所を選びません。
【マルミ光機】
DHG スーパーサーキュラー P.L.Dの撥水・撥油に加えてさらに静電気対策を行っているため、ほこりの付着も最小限に抑えることができています。静電気が発生しやすくセーターなどを着込む冬場の撮影でも安心して使用することができます。
さらに、ケンコーのZX C-PLと同様に反射率0.6%以下と非常に明るく鮮やかさを鮮明に写しだすフィルターに仕上がっています。
フィルター専業メーカーとして説得力のある非常に素晴らしいPLフィルターになっています。
まとめ
偏光フィルターはPLフィルターとも言われるレンズに装着するフィルターの1つです。
光の反射を抑えてガラスや水面に写るものを除去したり、色鮮やかに写したりすることができます。
様々な場面で使うことができるので一年中使うことができるので1つは持っていて損しないカメラアクセサリーです。反射率の低いフィルターを使う場合はケンコーかマルミどちらかのフィルターがオススメです。
PLフィルターを使って普段は撮れない写真をぜひ撮ってみてください!
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